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  社会文化研究原稿
コンビニエンスストア経営・契約の実態と、あるべき姿
                       コム・リテールサポート 植田立次

私は1995年3月より2001年5月迄の6年2ヶ月間、京都府南部でサークルKの加盟店を経
営していましたが、本部より一方的な契約解除により、閉店を余儀なくされた者です。
コンビニ経営日常業務の中での対本部交渉の他、現役の加盟店であった2000年1月名古
屋簡易裁判所へFC契約改訂の調停申立、2000年9月京都地方裁判所へ不当利得返還請
求の民事訴訟提訴等、FC契約の不公平な部分について是正を求め活動していた結果、報
復的な契約解除に至った訳です。私の場合開業して17時間後に騙されたと気付き、本部
にとって圧倒的に有利な契約内容である事に気付くのに数ヶ月を要しています。

リクルータから説明を受け、契約締結までにFC契約の不当性に気付かなかった自分を
責める日々が長く続きました、その結果騙された私が悪いのか、欺いた本部が悪いのか、
司法判断を仰ぐべく提訴しました。


1.専属管轄合意について。

契約社会の怖さを解り易い例を挙げて説明します。専属管轄合意とは、当該契約につ
いて紛争がある場合、第一審の専属管轄裁判所を予め契約条項に記載し定めてある事を
言います。私の場合は本部の本店所在地である名古屋となっていました。しかし京都に
居住し、京都で営業している加盟店が裁判の都度名古屋迄出向くと言う事では法廷闘争
が維持出来ません、そこで専属管轄合意の契約条項も無効であると判断し、京都地裁へ
提訴しました。そこでサークルK側は契約条項通り名古屋地裁へ移送すべきであるとし
て、京都地裁へ移送申立をしました。京都地裁の判断は画期的なもので「名古屋を専属管
轄とする契約条項は存在するが、FC契約の約款の一部であり、FC契約に係る本質的な多
数の条項の末尾に付け加えられているにすぎない。名古屋を専属管轄合意とする契約条
項はサークルKにとって常に便宜である反面、遠隔地に住所を有し、しかも住所地にお
いて契約締結の交渉を行った者にとって極めて不利益であるのみにとどまらず、紛争解決
のために合理的であるともいえない。」として、移送申立を却下しました。サークルK側
はこの決定を不服として、大阪高裁へ抗告申立をしましたが大阪高裁の判断も、京都地
裁に管轄権を認めるとのことで、京都地裁で公判が開かれました。この専属管轄合意に
ついてはFC契約といった事業契約だけでなく、一般の消費者契約においても横行してい
ます。例えばプロバイダ契約やパソコンの各種アプリケーションソフト使用契約等も専
属管轄合意の条項が定められています、皆さんは紛争になる事を前提に地元業者とのみ
取引されていますか、2001年4月より消費者契約法が施行されましたが、行政機関や
司法関係者の皆さんは、明らかに消費者保護の精神に逆行する契約内容を何故放置し
ているのでしょうか。


2.フランチャイザ(本部)フランチャイジ(加盟店)公平な利益分配により社会
  貢献が図れます。
コンビニエンスストアという業態は半径500m程度を一次商圏とする、極めて地域に密着
した小売業であるが、その利益の大半を本部がロイヤリティとして徴収する為、小規模
小売業として効率の良い販売実績をあげながら、営業地での利益は少なく、従って店主
の納税額が少なく、地方税や国民保険等の社会保険料の納入額を併せて考えると、地域
への貢献度は薄いのが実態です。又、失業率が5%を超え、有効求人倍率が0.6を割り、特
に正規従業員数が減少している現在、コンビニエンスストアは若年層のフリータから主
婦・中高年の失業者までの受け皿になっていますが、加盟店収入が少ない為に責任を持
って正規従業員として雇用出来ず、その大半がアルバイト従業員である、全国に5万店と
言われるコンビニエンスストアに3名づつ正規従業員として雇用出来たとすると15万人の
雇用機会が生み出される。


3.コンビニエンスストア業界の不思議な話。
a.契約書で共存共栄を唱えながら、本部しか栄えていない。
b.賞味期限切れで廃棄する商品(ゴミ)からロイヤリティを徴収する。
c.廃棄等ロスにはロイヤリティはかかっていないと言いながら、本当は徴収している。
d.東海村のJOCで、バケツで核燃料を混ぜて臨界事故を起したのはヒドイ話ですが、屋内
 避難勧告が出ている地区で営業を継続させたコンビニ本部はもっとスゴイ。
e.2001年12月兵庫県でコンビニ店主が誘拐事件で逮捕されましたが、この犯人は元コン
 ビニ本部の社員で店舗巡回指導をしていた経験あり、その人物をしてここまで困窮す
 る程加盟店の状況は過酷なものである。
f.コンビニの商品は高値安定、店主が自らの裁量で値下げ販売しようとすると、統一イ
 メージを損なうと言って妨害をする、再販価格の拘束にあたると思い公正取引委員会
 に相談しても、問題ではないとの見解。
g.深夜営業時、防犯及び従業員(店主も含む)の安全確保から複数人員配置が原則です
 が、採算から見てアルバイト従業員1名体制を深夜勤務シフトの原則としているチェー
 ンも在る。強盗のターゲットになったら困るのでどこのチェーンとは言えません。
h.店舗開発時の交通量調査は15分間実測して係数を掛ける、長時間実測よりも15分間実
 測の方が正しいと法廷で言い張る。


4.まとめ。
フランチャイジーに高いバーの損益分岐点が存在し、フランチャイザーにはプラスから
始まり、マイナス勘定が存在しない会計システムがコンビニ会計の特徴です。この極め
て不平等な契約内容が巧みに隠され、それに気付いた時点では契約解消に違約金が発生
し、それまでの投資と努力が水の泡となるというのが実態です。証券取引市場一部上場
の会社だから騙される様な事はないだろうと言う考えでは、契約社会で生きていけませ
ん。しかしこれは大変悲しい事です、親による子供いじめの様な行為が自由意志による
契約だから許されていていいのでしょうか。誌面の関係で多くを語れませんでしたが、
ご意見・ご質問等がございましたらe-mail:touch88@dk.pdx.ne.jpまでご一報下さい。
 

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