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サンクスに税務署の指導、酒販免許の不正取得手助けで
大手コンビニエンスストアチェーンのサンクスアンドアソシエイツが、加盟店の酒販免許の不正取得を、会社ぐるみで手助けしていたことが、本誌の調べで分かった。現在、同社は税務署の指導を受けて、対象となった加盟店に対し、免許を返上するよう呼びかけている。
●本部が名義貸しを斡旋
その入手の方法は、酒販免許の所有者を加盟店の形式上のオーナーとするもので、いわゆる「名義貸し」と呼ばれる。少なくとも兵庫県にある数店が本部から返上を求められていることが分かっている。そのうち一部の店舗は、返上の条件を巡って、本部と折り合いがつかず、トラブルに発展している。
酒販免許は、味噌やしょうゆなど発酵調味食品の販売経験があるなど、一定の要件を満たした人が申請した場合に、税務署から与えられる。ただ、その際、行政区の人口に応じて出店数を規制する「人口基準」が存在するため、交付数には限りがある。
平均日販が50万円前後のコンビニ店において、酒が扱える店は、扱えない店と比べ、1日の売上高が6万〜8万円は多いと言われている。新規加盟契約を結ぶ際には、酒を扱えるかどうかがポイントになることが多い。そこでサンクス本部は酒販免許を持たない「脱サラ組」などに開業してもらう場合、一部で名義貸しによる取得を斡旋した模様だ。その手順はおおむね次のようなものである。
(1)廃業を考えている酒屋を探す(2)有限会社などの法人を設立し、免許所有者を代表者とする(3)加盟契約者は形のうえでは従業員として働く(4)数年後に加盟契約者が(発酵調味食品の販売などを経験することで)免許取得の要件を満たした時点で、代表者の名前を変更する――。
今回、サンクス本部が返上を求めているのは、(4)の名義変更を終えていない店舗が対象。同社がここへきて免許の返上を求めているのは、2003年秋に予定されている酒販免許の自由化と関係がある。自由化によって人口基準は撤廃されるが、その後も税務署が免許を交付することに変わりはない。
酒税法によれば、税務署は不正に入手した人からは、免許を剥奪できる。自由化の際には、既存の取得者も含めて、要件の再チェックが行われ、そこで不正が発覚すると、税務署がそのチェーンに対して、新規に酒販免許を与えない可能性がある。そのことを税務署から告げられたサンクス本部が、あわてて加盟店に返上を持ちかけたというのが真相のようだ。
●コンビニ業界全体に蔓延か
しかし、本部の要請に対し、加盟店の抵抗は大きい。兵庫県の店舗の例では、サンクス本部は、店舗が免許を返上すれば、毎月の逸失利益を補填すると申し出ているが、加盟店はこれにクレームをつけている。なぜなら、酒を扱えなければ、来店客数が減るため、その打撃は単に酒の売り上げ減にとどまらないと考えられるからだ。
そもそも、加盟店は「酒の免許があれば有利な店舗経営ができる」と本部に言われ、数年前で数百万円、バブルの頃には1000万円を超える対価を支払って免許を取得した経緯がある。自由化の行方も不透明なため、うかつには返上に応じられないというのが本音のようだ。
サンクスは本誌の取材に対し、「詳しくはコメントできないが、税務署の指導に従って、そうしたこと(一部店舗に対する免許返上の要請)をしている。税務署からは不正とは言われていない」(CS推進部広報)と回答した。近畿エリアを管轄する大阪国税局は「個別の指導内容については、一切コメントできない。ただ、一般論で言えば、名義貸しは法律上認められていない」(広報広聴室)と回答を寄せた。
コンビニ業界では「名義貸しで酒販免許を取得しているのはサンクスだけではない」(コンビニの事情に詳しいコンサルタント)との指摘もある。これが業界全体に広がる行為だとすれば、これまでコンビニは違法行為によって、地域の中小小売店に打撃を与えてきたことになる。食品メーカーなどの相次ぐ不祥事では、該当するメーカーの商品を店頭からいち早く撤去したコンビニ業界だが、今度は自らの順法精神を問われそうだ。(山川 龍雄)
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